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2004年10月30日

ある不動産屋の営業マンの話

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雨の中、午前中から不動産屋へ。本気だからね!
いくつか新しい物件を見せてもらい、内見の予定を立てるのだ。気になる物件を中心に行動ルートを考え、いざ外へ。すると彼は傘も持たずに営業所をでてくるではないか!

「傘もたなくていいんですか!?」

驚いてたずねると「あっ!忘れてた!」といってデスクに戻り、財布をもって戻ってきた。傘はどうするんだとたずねたのに、財布を握り締めてニコニコやってくるので「なんだこいつは?」と思った。

「傘いらないんですか? 傘ですよ!傘! 財布じゃなくて傘!」
「私、今日雨は降らないとおもったんで傘持たずにでてきちゃったんですよ~。だから近くのコンビニで傘買おうと思って」

つーか、こいつ、財布も忘れようとしていたのか…_| ̄|○

気を取り直して営業所前から歩き出す。と数歩あるいて気が付いた。あら?あんた、どっちにいくのよ!目的地の反対方向じゃないの!!!!

「そっちじゃなくて、こっちじゃないの?」とあたしが指摘。
「あー! そっちなんですか?」

って聞くな!! 営業だろ!常に地図を握り締めとけよ!
土地勘がないうえにあんまりボケてるんで、マジで心配になった。昨日の話では今の営業所に来て1ヶ月だと聞いていたけど、なんとその業界に入って1ヶ月らしい。

(;゜Д゜) すげーし・ん・ぱ・い!

「ってことは、その前はどこで何をしてたんですか?」

この質問がいけなかったらしい。

「えーっと、話すとちょっとややこしくて長いんですけど」とその不動産屋の営業マンは歩きながら語りだした。本当に長いんで整理すると、

  1. 以前は東北にいた
  2. 電力系の会社に勤務
  3. 内勤で、月収60万以上、ボーナスは120万強の高給取りであった
  4. 上から命令口調で指示を出すような立場の仕事
  5. 16年勤務したが、あるとき法律系の学校にいきたくなり、退職
  6. なんで辞めちゃったのかなぁ?とちょっと思う
  7. 退職金が800万円でたので、それで学校へ…と思ったら、父親の事業が傾き、従業員の給料のために退職金を貸してくれ翌月返すから!と頼まれ、父親のためならと快く全額貸し出す
  8. しかしほどなくして父親が亡くなる
  9. 父親の会社が倒産
  10. さらに従業員だったおばはんにより、会社の売り上げをごっそり持ち逃げされる
  11. 債権者が押しかけてくる
  12. 母親が精神的に参ってしまったため、会社の整理を手伝わざるを得なくなる
  13. 持ち逃げ事件を告訴しようにも、証拠不十分で告訴できず=回収できず
  14. 倒産関連の片付けや裁判所やらで半年間何もできず
  15. 落ち着いたところで、電気関連の仕事をしようと東京へ
  16. 現場未経験のため、採用されず
  17. 下っ端経験がないため、自分でも無理だと痛感
  18. 不動産関連の法律の勉強になるかもしれないと、今の不動産屋の面接を受けたら通った
  19. どうせなら自分を追い込んだ状態にして、挑戦してみようと思った
  20. 現在に至る

らし~よ~(-_-)

「お払いしたほうがいいんじゃない?」というと「もうおそいっすよ。だってオヤジがなくなる前にはばぁちゃんが死んで、その後じいちゃんも死んで、そんでオヤジですからねぇ。もう初七日とか四十九日とかいろいろが立て続けで親戚もさすがにうんざりというか…」という。「でも、ぶっちゃけた話、亡くなったみなさんの生命保険金が入ったりしたんでしょう?」というと、ゼロだとか。「オヤジは会社がやばくなったんで、生命保険全部解約して、事業にあてちゃって、その後に死んだんですよ~だから何にもないんすよ」

暗い…暗すぎる…_| ̄|○

話の途中でコンビニを見つけたので彼は傘を買った。「最近の雨って酸性雨らしいじゃないですか!」「もしかして頭皮の心配してるんですか」「だって僕やばいんですよ!(笑)」
チラッと頭皮を見たが…確かにやばくなりつつあるかもしんない状態である…。

人生にも頭皮にも暗くなったところで1軒目の物件に到着。ジックリ見学。しかしど…どぅなのよぅ…(汗)という物件であった。終了!次だ次!と気を取り直して歩き出す。

歩きながら、今度は保険に関する話題に花が咲く。これまた要約すると、彼の考えはこうだ。

  • 前の会社にいた頃は、安い保険に入っていた
  • ガン保険とかは入っていない
  • ガンになったときはなったときだ!
  • つまり、今は何も保険に入っていない
  • なんとかなるだろうと思っている

会社辞めたのと同じで…もしかしていきあたりバッタリ…? 歳もそう変わらないであろう男性で、左手の薬指に指輪のない人は珍しく貴重ではあるが、まあがんばってくださいとでもいいましょうか(--;;;

ふと見ると目的地よりも先の住所が電柱に書いてある。

「あら? もう通り過ぎてるんじゃないです? ここってすでに中野区なんですけど」
「本当だ!通り過ぎちゃいましたね」
「やっぱり曲がるところ、さっきのとこだったんじゃないですか?」
「そうかもしんない!」

っておまえ、しゃべってばかりいないで住所見とけよ…(涙) そんで、地図くらい開けよ…。

「地図帳は持ってますよね?」
「あ、持ってます! 持ってますけど、今日は朝からいろいろとバタバタしてたんで…持って来てません。すみません」

それは持ってるとはいわないのだよ!チミ!

そんで、なんであたしが地図開いてるんだよ! さっきコピーしてた細かい地図の紙をさっさと出しなさい。そして位置を確認しる!それがあんたの仕事!!!

「もー! 頼むよ~!」

つい言ってしまいました(爆)

なんとか2軒目の物件に到着し、またしてもじっくりと見学。1軒目よりはいいが、眺めは悪い。それなりの広さはあるのだが、妙に囲まれているような圧迫感を覚えたので、あまり候補には入れたくないかも、と思った。

この2軒を見て、次を見るかどうか決めるという話になっていたので、次も見るべく一旦営業所に引き返すことになった。しかしすでにお昼を過ぎており、お腹もすいたので、二人で食事を取ることにした。メインストリートにデニーズがあるので、そこで食事。男性と食事だ。しかし散々暗い身の上話を聞いたばかりのため、全然興味沸かず(爆)

席についてから「あの、失礼ですけど、おいくつなんですか?」と聞いてみた。だって、あんまりトボけてるんだもの…。老けて見えるけど、実は20代前半とかだったらまだ許せるわよ。100歩譲ってだけど。しかしなんと同い年だと判明。そりゃそうか。前の会社に16年も勤めてたんだよね。でも一瞬絶句。

その席は喫煙席だったので、「吸ってもいいですか」と聞かれた。こっちも喫煙者なので、OKすると「そうなんすか!そんじゃ今はちょっと営業マン止めさせてもらっていいですか?」と言い出した。どう止めるんだ?(笑) 喫煙することか? まぁいいけど。つーか、おまえ土地勘ないのに地図帳持ってないから失格!とか思ったけど。

自ら営業マン一時解除モードのせいか、食事をしながら彼のぶっちゃけトークはさらに続いた。

実は今の営業所には去年まで十数人の営業マン他スタッフがいたらしい。しかし現在では営業はたった2名。なんでも一人が独立するということで、会社の顧客情報ともども社員をほとんど引き抜いて出て行ってしまったんだとか。最初はそんな経緯を知らなかったのだが、ある不動産屋に物件の問い合わせをした際、「お宅には情報を流せない」といわれ、よくよく聞いたらそこが問題の新会社だと分かったらしい。

しかもよほど恨みを抱いていたのか、独立した人々は元の会社、つまり彼のいる会社を潰しにかかっているらしいのだ。一度に大勢の営業マンが辞めたせいで、事業所が1つ機能しなくなり、事実上幽霊会社状態になってしまったらしいのだが、社長がその事業所を閉める手続きを怠っていたのに目をつけた独立会社の方が、それをチクり、社長は今月一杯で社長の資格を剥奪されてしまうのだとか。って、今月一杯って明日までじゃん…(滝汗)

「だから、会社ヤバイみたいなんすよね」
「は?」
「社長が資格を剥奪されちゃったんで、うちの会社、ヤバイんですよ」
「そんな!(会社に相談してるあたしがヤバイじゃん!)」
「でも大丈夫でしょ」
「どこが!?」
「社名とか変えて、新しくやりなおすみたいですよ」

…ってぜんぜん大丈夫そうに聞こえないのであった。あんた、そろそろ営業マンに戻ったほうがよくねぇ?と思った。

不動産屋同士の紹介のシステムやマージンの話など、話はとどまるところを知らない。そんな彼は坦々麺にどんぶりモノを頼むので驚いたが、食べ終わるとポツリと言った。

「はぁ~ストレスのせいか、2つも食べちゃいました」

なんだそれ…(汗)

そのまま延々話をしている場合ではないので、再び雨の中営業所に戻った。
そして、次に内見を予定している物件について、大家さんの確認をとり、再度外へ。

その駅は今住んでいる街の隣の駅なのだが、初めて降り立った。想像していたよりは悪くない。物件までの所要時間は10分かからないといったところか。多少古いけど、広さも間取りも悪くない。値段もそこそこで、久しぶりにまともな物件であった。ただ、ここに机を置くであろうというフローリングの部屋からの眺めに不満が。真っ先に目に入ってくるのが、陰気な家の汚れた壁である。距離はあるものの、陰気である。今日は雨が降っていて、時間的にも少し暗めというのもあるけど、、、うーん…。「ここにします!」と即答できない。部屋の使い勝手はよさそうなだけに、妥協できるかどうかが悩みどころだ。

その建物内にもう1つ空いている部屋があったので、同時にそちらも見せていただいた。うーん微妙。ビューはいいけど、部屋の使い勝手がよくない。私の場合、だけど。普通の人ならまじでいい感じだと思う。32平米の1DKなので、リビングがすげー広いのだ。でも、やっぱり自分の理想とする使い勝手には程遠い。残念。

というわけで、時間的にも体力的にも今日はそこまでが限界だったので、再び営業所に戻った。初めて降り立った街ではあったけれど、今の最寄駅から徒歩でいける距離であることもあって、候補地に入れてもよくってよな気がしたので、改めてその街も含めて最新物件を検索してもらい、プリントアウトされたリストをベースにいいのがないか探し始めた。

その間、彼は不動産屋によるダミー情報の話をしてくれた。

「ほら、みてください。これとこれ、そっくりですよね。住所が同じなのに、所要時間が違ってたりして。情報出してる不動産屋が同じなんで、多分これは嘘ですよ」とか(笑) その場で気になった物件の問い合わせをしてもらったけど、タッチの差でなくなっていたりで、なかなか出会えず。

だんだん頭も疲れてきたので一旦引き上げることに。半日付き合ってもらったので、深々と頭を下げてその場を後にした。

でもあいつ、あたしが戻ったあと、「余計なこというな!」って絶対先輩に怒られてるわ(⌒▽⌒;

「社長には、僕がつかえないと思ったら、いつでも首にしてくれていいですから!って言ってあるんです!」と言ってたけど、明日いなかったりして。営業マン2名しかいないんじゃ、当分大丈夫か…。

あー・・・疲れた。

投稿者 suzumari : 2004年10月30日 19:06

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